イラストレーターVer9以降は、オブジェクトを透明にする事が出来るようになりました。
透明はオブジェクトを選択して、透明パレットのスライダーを動かすだけで、簡単に適用させる事が出来ますが、透明効果を利用したドキュメントをデータ入稿する際には、設定に注意が必要です。
印刷会社の印刷機や条件によっては、透明の分割・統合を実行するなど、正しい設定を行わないと、キチンと印刷出来ないトラブルが発生する場合があります。
以下、操作画面はイラストレーター CS3 Mac版になります。
そもそも透明とは
オブジェクトを透明にするには、透明パレットを使います。
オブジェクトを選択してから、透明パレットの不透明度の数値の右側にあるボタンをクリックすると、スライダーが現れます。スライダーを左側にドラッグさせると、透明に変わっていきます。
透明パレットが見当たらない時は、メニューからウィンドウ/透明をクリックして下さい。
例えば、不透明度を50%にするとこんな感じに、下のオブジェクトが透けて見えるようになります。
このように簡単に面白い効果が得られますが、実はこの透明という概念はPostScriptが認識してくれませんので、従来からある一般的な印刷機ではそのままの状態では出力する事が出来ません。
その為、データを入稿する際は、ドキュメントの透明に関する設定を適切に行ったり、場合によっては、イラストレーターのデータ上で透明の分割・統合作業を行う事が必要なケースがあります。
透明は、効果メニューのドロップシャドウや、ぼかしなどを行った場合でも適用されます。透明パレットで不透明度を操作してないので大丈夫と思っていても、知らないうちに利用している場合がありますので気をつけましょう。(チェック方法は次のエントリー【分割・統合プレビュー】透明のチェック方法をご覧下さい)
透明の分割・統合の仕組み
透明の分割・統合を実行しても、オブジェクトの外見は変わりません。
不透明度50%のオブジェクトに透明の分割・統合を適用させてみます。
オブジェクトを選択したら、メニューからオブジェクト/透明部分を分割・統合をクリックします。
透明部分を分割・統合ダイアログが開きます。印刷向けデータの場合は、一般的にはプリセット・高解像度を選択してOKをクリックします。
透明部分が分割されました。見た目は変わりませんが、透明パレットで透明度を確認してみると、不透明度が100%に変更されています。
試しにグループを解除してみると、オブジェクトが色別に分割されているのがわかります。全てのオブジェクトの不透明度が100%に変更されて、透明な部分が無くなっています。
ちなみに、透明の分割・統合を行うオブジェクトに、ドロップシャドウなどの効果が含まれている部分は、ベクトルデータに変換出来ないので、ラスタライズ化され画像として分割されます。
透明の分割・統合の設定方法
透明の分割・統合は、上記のように手動で行えますが、イラストレーターでは透明に関する設定をドキュメント単位で変更する事が出来ますので、最初に印刷向けに最適な設定にしておきます。
各種設定数値や推奨する保存形式は、印刷会社ごとに違いますので、各社ごとのテクニカルガイドをご覧下さいませ。
透明の分割・統合の設定は、ドキュメントを印刷する際や、ドキュメントを保存する際に自動的に分割・統合が行われる場合に影響します。
透明を認識出来ない古い保存形式でドキュメントの保存を実行すると、保存時に透明部分の分割・統合が自動的に行われてしまいます。その場合、分割・統合されたオブジェクトは元に戻せなくなりますので注意して下さい。
透明が自動的に分割・統合される保存形式
イラストレーターVer8以前の形式での保存
EPS形式での保存
PDF1.3以前の形式での保存
一般的な印刷向けデータの場合は、透明に関する設定はドキュメントのラスタライズ効果設定とドキュメント設定・透明の二カ所で行います。
透明の分割・統合で画像化する部分がある場合に備えて、ラスタライズ効果設定を設定します。
メニューより効果/ドキュメントのラスタライズ効果設定をクリックします。
カラーモードはCMYK、解像度は高解像度(300ppi)を選択して、OKをクリックします。
Illustrator CS3の場合、新規ドキュメントを作成する際に、詳細タブをクリックすれば、ドキュメントのラスタライズ効果が最初に設定出来ます。データ制作途中から変更するのはオブジェクトに影響を及ぼす場合がありますので、一番最初に設定しましょう。
次に、ドキュメント設定を設定します。
メニューよりファイル/ドキュメント設定をクリックします。
ドキュメント設定・透明を選んで、書き出しとクリップボードにおける分割・統合のプリセットをクリックして高解像度を選択します。
プリセットをカスタムする場合は、カスタムボタンをクリックして、各種数値を変更します。ラスタライズとベクトルのバランスは通常は上図の通り 100 で良いでしょう。(このスライダーを左に移動して、0にすると、透明部分が全て画像化されます)
以上の二カ所の透明に関する設定を行えば、一般的な印刷向けに適した透明の設定となります。
ドキュメント内に含まれている透明オブジェクトのチェック方法
透明効果がドキュメントのどの部分に使われているのかをチェックする方法としては、分割・統合プレビューを利用すれば簡単に調べられます。
長くなったので、次回に続きます。
(つづく)
次のページ→
Illustrator 透明効果【分割・統合プレビュー】透明のチェック方法
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